pi22naのブログ

pina's Novel

華・prologue・

  1. ・prologue・
 
21xx年
 
世の中には「存在してはいけない」病気があった。遺伝子操作によるデザイナーベイビーが富裕層で流行して数年が経った頃、その子供達の500,000人に一人の確率で何らかの異変が起きた。当時研究者達が予想だにしなかった病気、それが
 
≪ 突発性変異症候群 ≫
 
薬も無ければ治療法も無く、行き場を失った感染者達が ' 隔離病棟 ' に集められた。
その病気は多種多様に溢れていた。
 
ある女の身体は、徐々に植物化していく病気に侵され、
身体の所々に赤い蕾や花が咲く。
 
またある男は、感情の変化で身体の一部が変色していく病気で、
腕が真っ青であった。
 
共に感染はしないが、世間で生きていくにはあまりに異色である。間もなくして隔離病棟への入院が決まった。其処では命の保証も病気の改善も約束はされていない。進行を遅らせ痛みを取る事、安静にする事、穏やかな終りを迎える事、これがこの病棟の目的だった。
 
 
 
例にあげた二人の話をしよう。
 
 
 
女は体から咲く花を隠すように
いつも布を頭から被って、身を潜めながら生きていた。
 
男はマスクをして顔を隠し、体の色を隠すため
どんなに暑くても長袖を過ごしていた。
 
 
季節は真夏の8月
時刻は夜中の2時
 
 
兄の元へ急ごうと暗闇を走っていた女と
眠れずに半袖でフラついていた男が
 
皆が寝ている深夜の病棟内で、出逢った。